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平成20年5月号

市場事務所便り
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社会保険労務士市場 敬將
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処分決定前の自宅謹慎期間を
無給扱いにできるか?

◆重要情報を他社へ漏洩!
ある会社の社員が会社の重要情報を他社へ漏らしてしまい、処分決定まで自宅謹慎するように会社から命じられました。 1週間の謹慎後、減給処分となりましたが、会社は「謹慎中は無給」と言い渡しました。 就業規則には謹慎に関する規定は特になく、社員は納得できない様子です。

◆規定がなくても謹慎処分に付すことは可能
社員の行為が就業規則で定めた懲戒事由に該当する場合、会社は処分内容を決定します。 処分決定をする前の段階として「自宅謹慎」や「自宅待機」を命じることがありますが、就業規則にこれらの扱いに関する規定がない場合、そのような謹慎・待機命令を下せるのかという問題が生じます。
大企業に比べ中小企業では、就業規則に謹慎に関する扱いを明記していないところが多いかもしれません。 結論から言うと、そのような規定がなくても、処分決定前の自宅謹慎を命じることは、会社の指揮命令権の一環である業務命令として可能です。
会社の業務命令として自宅謹慎を命じた場合、社員が「働きたい」と言っても会社はこれを拒否することができます。 会社には社員の行為が懲戒事由に当たるのか調査する必要があり、職場秩序を維持するためであれば当該社員に自宅謹慎を命じることもやむを得ないと認められるためです。

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◆「謹慎」の付与名目によって異なる賃金支払義務
処分決定前に自宅謹慎を命じる場合の扱いをめぐる裁判には、「懲戒処分ではなくても、会社側に職場秩序維持の理由などがある場合」に謹慎を命じることができるとしたものの、 このような場合の自宅謹慎は当面の職場秩序維持の観点からとられる一種の職務命令であることから、使用者には謹慎期間中の賃金の支払義務があると判断したものがあります (日通名古屋製鉄作業事件・平成3年7月22日名古屋地裁判決)。
他方、謹慎命令が、懲戒規定に基づいた「処分」として出されたものならば、謹慎期間中は無給でもよいとされています。 例えば、調査のために1週間休むように命じた後、懲戒処分として再び1週間休むように命じた場合、後者の期間は無給となります。
しかし、処分対象の社員に会社内で強い権限があれば、安易に証拠をもみ消すことができるおそれもあります。 前述の名古屋地裁判決は、このような場合には「不正行為の再発、証拠隠滅のおそれなどの緊急かつ合理的な理由」があるとして、 例外的に処分決定前の謹慎でも無給にできると判断しています。 ただし、この要件は厳格で、該当するケースはかなり限られます。

◆この問題に関するポイントは?
ポイントは次の通りです。
1.規定がなくても、会社は業務命令として自宅謹慎を命じることができる。
2.自宅謹慎が懲戒処分として会社が命じたものである場合は、当該期間は無給でよい。


政府管掌健康保険が
1,577億円の赤字を計上

◆なぜこれほどの赤字になった?
主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険(以下、「政管健保」という)の医療費収支が、2007年度決算で1,577億円程度の赤字を計上する見通しとなりました。 5年ぶりの赤字転落となりますが、社会保険庁では、2008年度も1,700億円程度の赤字が見込まれるとしています。
4年連続で黒字となるなど収支状況を回復していましたが、それがなぜこれほどの赤字を計上することとなったのでしょうか。

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◆医療費の増加で採算が悪化
2007年度の政管健保の医療費収支見通しは、 支出が前年度より4,000億円程度多い7兆2,744億円、収入が7兆1,167億円で、1,577億円の赤字となる模様です。
政府は、慢性的・構造的な赤字体質を改善すべく、2003年度に医療費の患者負担の割合を2割から3割へと引き上げました。 これにより収支状況は改善しましたが、わずか4年間で再び赤字体質に陥ることとなりました。
また、2008年度には、メタボリック症候群を予防する特定健診・特定保健指導の開始で、新たに700億円の負担が発生します。 そのため、2008年度も赤字となることが確実とみられています。
こうした赤字の背景には、政管健保の採算の急速な悪化があります。 高齢化で医療費が大きく膨らむ一方、賃金の伸び悩みなどで保険料収入は微増にとどまっており、再び構造的な赤字体質に陥りつつあるのです。 今後、大企業の社員等に、保険料引上げなどの形で負担が付け回される懸念もあります。

◆一時的な対策でなく抜本的改革が必要
社会保険庁では、財政の安定運営を目的に積み立ててきた「事業運営安定資金」を取り崩して赤字を穴埋めしますが、この残高は2006年末時点で約5,000億円程度。 現在と同程度の赤字が今後も続けば、2009年度にも底をつきます。
厚生労働省は、社会保障費の伸びを抑制する観点から、政管健保に対する国庫負担金を1,000億円程度削減し、 これを大企業の社員が加入する健康保険組合と公務員が加入する共済組合に肩代わりさせる特例法を国会に提出しました。 これは2008年度の特例措置ですが、赤字が続けば、2009年度以降もこの肩代わりが行われる可能性もあります。 ただ、負担を肩代わりさせるような対策では、根本的な解決にはつながりません。
現在、社会保険庁が運営する政管健保は、2008年10月より、全国健康保険協会管掌の通称「協会けんぽ」となり、国から独立した新たな健康保険として発足します。 組織の移行だけではなく、制度自体の抜本的改革も望まれるところです。


各業種に広がる
パート・契約社員等の正社員化の動き

◆改正パート労働法が施行
非正規雇用労働者が働く人の3人に1人を占めるまでに拡大しているなか、4月1日から改正パート労働法が施行されました。 同法では、パート労働者の通常の労働者(正社員)への転換を推進するための措置を講ずるように事業主に義務付けています。
厚生労働省が発表した「労働経済動向調査」(2月)の結果によれば、過去1年間に正社員以外から正社員に登用した実績のある事業所の割合は41%となっており、 特に製造業、飲食店、宿泊業、サービス業などでその割合が高くなっています。 今後の方針については、64%の企業が「正社員に登用していきたい」としています。
改正法の施行を機に、非正社員を正社員化する動きはますます広がっていきそうです。

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◆パート・契約社員を正社員に
東京都に本社を持つ日用雑貨販売大手の株式会社ロフトでは、パート社員・契約社員のうち、今後、希望する者を正社員としていくそうです。 同社が雇用しているスタッフは約3,300人で、そのうち正社員は約400人。 1年契約の社員は280人、半年契約の社員は2,650人で、そのうちの2,350人が正社員になることを希望しているそうです。
なお、新規採用者については、6カ月間の見習い期間を経て、正社員か有期雇用かの選択を行います。
ちなみに、正社員化に伴う同社の総額人件費は、約1割程度増加する見込みだそうです。

◆製造大手では派遣社員を直接雇用などに切替え
また、派遣社員を多く抱えるキヤノン本体・グループ18社では、子会社を含めた工場などの製造現場で働く約1万2,000人の派遣社員の受入れを年内にも全面的に打ち切り、 半数を直接雇用の期間社員、残りの半数を請負会社との契約に切り替えること発表しました。
同社は以前から『偽装請負』があるとして労働局などから指導を受けており、派遣契約への切替えをすすめていましたが、 直接雇用と請負とに再編する方針を決めたようです。
建機製造トップのコマツでも、2009年3月末までに工場で働く派遣社員全員を期間社員に切り替える方針を明らかにしています。


『年金記録問題』
『ねんきん特別便』をめぐる状況

◆全受給者・加入者9,500万人に発送開始
4月2日から、記録漏れの可能性が高い人以外の全受給者・加入者計9,500万人に向けて「ねんきん特別便」の発送が始まりました。 6月以降には事業所経由での送付も予定されています。 社会保険庁でも、社会保険事務所における休日の相談日を増やすなどして、相談体制を強化する方針を明らかにしています。

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◆民主党が「ヒント付き特別便」の独自法案提出へ
しかし、社会保険庁の発表によれば、これまでに「特別便」を送付した受給者の約4割に相当する約90万人が未回答であり、 回答した約141万人のうち約103万人は「訂正なし」と答えていますが、実際には記録漏れの事例が相当数あるそうです(3月18日現在)。 「特別便」を受け取っても、「具体的な情報が載っていないのでわかりにくい」「昔のことで思い出せない」という人が多いようです。
民主党では、「特別便」が届いても記録漏れに気付かないとみられる人(3月末までに特別便が届いた記録漏れの可能性が高い年金受給者・現役加入者のうち記録を訂正した人を除く)を対象に、 記録漏れがあるとみられる記録やヒントを同封して「特別便」を再送する独自の法案(ねんきん特別便緊急支援法案)を今国会に提出する方針を示しています。

◆物証があれば社会保険事務所でも審査
またこれまで、自分の記録に誤り等があると思う人は、「年金記録確認第三者委員会」に申し出る必要がありましたが、 家計簿や確定申告書のコピーなど、保険料を納付していた物的証拠があることで判断しやすい案件については、社会保険事務所に申し出て年金支給の是非を審査してもらえるようになりました。
審査が進まない「年金記録確認第三者委員会」の審査を省略して記録回復のペースを上げるのがねらいだそうです。
また、厚生労働省は、国民年金加入者が満額の受給額を確保した後も保険料を払い続けてしまった分について、返還する制度の創設も検討しているようです。


今月のことば
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はじめに明言させていただきますが、私は決して、企業側を一方的に擁護しているつもりはありません。 クライアントからトラブルの相談を受ける中で、「もう我々だけでは手に負えない。直接当事者の社員と話して欲しい」と疲れ果てた顔で担当者の方から懇願され、社員の方とお話しさせていただく機会があります。 そうした場合、組織対一社員、つまり個人の争いですから、当然個人のほうが力は弱いわけで、そうしたパワーバランスも配慮した上で、 公平な目線で対話に臨みます。
しかしそのほとんどのケースで・・・・・対話が終わった後に、私自身が途方に暮れてしまうのです。正直、話にならないのです。 トラブルを巻き起こした当事者である20代〜30代前半の男女共に、あまりにも自分に甘く、社会人としての適正に欠ける社員が多いことに気がつきました。 終始一貫して自分本位であり、周りの状況が読めておらず、しかも、悪びれもしません。迷惑をかけているという実感すらなく、大人としての自覚に乏しい。 そんな姿を見るとこの先、この人は誰かの役に立つときが来るのだろうかと気の毒にさえ思えてきます。 しかし当人といえば、そんな周囲の心配などどこ吹く風です。 自分のためだけに仕事をし、そこが自分にとって心地よい環境でないと判断すれば、すぐに周囲を批判し、 自分にとって心地よい環境を探すことだけを考えるのです。

田北百樹子(社会保険労務士) 著
『シュガー社員が会社を溶かす』より抜粋


〜当事務所より一言〜

今年度はくじ運が良く、小学校、中学校ともにPTA新聞を作成する役になりました。
「新聞づくり」という役は責任は他の役に比べ少ないのですが、皆が協力しないと効率があがりません。 先日も小学校の会議があったのですが、委員長が質問をしているのに、その質問に対して隣の人と話しているだけで声をあげない事が多く、本当に効率が悪い会議でした。 仕事、日常生活においても全く同じだと思いました。事務所でも1人でさんざん考えた事を声に出したとたん、あっという間に解決することが多々あります。 今問題になっている硫化水素自殺の多発も、その前に誰かに一言声をあげる、ということに気づいて欲しいです。

(町田)