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平成17年4月号  



市場事務所便り

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社会保険労務士 市場 敬將
 
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高年齢の賃金設定

 改正高年齢者雇用安定法によると、企業が労働者を60歳以降も継続して雇用するには、(1)定年を引き上げるか、(2)定年を廃止するか、(3)再雇用するか、の3つの方法が考えられます。大半の企業が再雇用制度を導入すると見られているのは、退職後に改めて雇用契約を結ぶことで賃金を下げられるからです。
 60歳以降も働いた場合、高年齢雇用継続給付が支給されるケースが多くなります。同給付金は60歳以降の賃金が60歳時に比べて75%未満に減った場合、賃金額の減少率に応じて支給されるというものです。
 60歳から受け取る厚生年金は、在職老齢年金という仕組みで賃金に応じて減額されますが、高年齢雇用継続給付の額によっても減額されます。
また、2005年4月からは、在職老齢年金の仕組みが変わります。変更前は、60歳台前半で働いていると年金は必ず2割以上減額されていたのですが、変更後は、賞与を含めた月給と1カ月分の年金の合計が28万円以下ならカットされないことになります。
 社員の年金がカットされないように、賃金を月15〜20万円に設定する動きが広がりそうです。賃金と年金の合計が月28万円とすれば、年収336万円となり、高年齢雇用継続給付を加えると、400万円弱になります。
 失業給付から企業を対象とした雇用安定事業、そして雇用継続給付と、雇用保険事業は拡大してきました。長期化する景気低迷で、雇用保険財政も悪化しているのです。
 一連の改正は、高齢者の就業意欲を損ねず、かつ公的年金財政収支を悪化させないためのギリギリの選択ではないでしょうか。高齢者の賃金を、意欲や能力にかかわらず低賃金に抑制しかねないという問題は残りますが。
 茨木商工会議所65歳継続雇用達成事業で行ったアンケートでも、高齢者(60歳〜65歳)を継続雇用する上で改善した点は、「賃金体系」が31%、「適正配置」が17%です。改善点において一番苦労した点は、やはり「賃金体系」が42%、「就業規則」が14%となっていました。
 この結果からもわかるように、賃金体系の見直し・賃金額の設定が、雇用継続における企業の課題となっています。社会保険労務士などの働きが期待されていると思います。

 
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平成17年4月からの年金制度

 国民年金未納者数が、平成15年度末で445万人に達し、平成13年からの2年間で120万人近くの増加となったことが発表されました。自営業者の人達が加入する国民年金は、保険料を自分で納めなければならず、給料から天引きされるサラリーマンや公務員などに比べて未納が起こりやすい状況にあります。
社会保険庁では、これまで3年ごとに未納者数を公表してきましたが、今後は毎年公表する方針を固めました。
 このような未納問題および少子高齢化が急速に進行する中で、将来にわたり「維持可能」で「安心」な年金制度とするための改正が進められています。

◆国民年金保険料の引き上げ
 現在の国民年金保険料1万3,300円が、毎年280円ずつ引き上げられ、平成29年度以降には月額1万6,900円で固定されることになります。
 国民年金保険料は口座振替にすることができます。また、1年分を前納すると、現金払いよりも530円の割引があります。

◆第3号被保険者の救済
 第2号被保険者との結婚により被扶養配偶者となった場合、第3号被保険者となります。平成15年3月までは、本人が市区町村の国民年金課で手続きをする必要がありましたが、手続きを忘れていた場合は未納扱いとなり、遅れて手続きをした場合でも、過去2年分までしかさかのぼることができませんでした。
 しかし、今回の改正により、住所地の社会保険事務所に届出を行えば、過去2年以前の期間についても第3号被保険者期間として取り扱うことができるようになりました。

◆在職老齢厚生年金の一律2割カットの廃止
 今までの制度では、60歳を超えて年金を受給しながら就労している場合、60歳台前半の方は、年金額の2割が自動的にカットされていました。高齢者の就労意欲を阻害する要因として議論されてきましたが、今回の改正により、一律2割カットが廃止され、年金額と賃金の額に応じた支給停止のみとする仕組みに変更されることになりました。

◆納付猶予制度の新設
 現行の免除制度では、低所得者の若者が所得の高い親と同居している場合等は、保険料免除の対象にはなりませんでしたが、今回の改正により、本人および配偶者の前年の所得が一定以下であれば、申請を行うことで保険料の納付を猶予することができるようになり、10年以内であれば猶予した保険料を追納することができるようになりました。ただし、あくまで猶予であるため、年金の受給資格期間には算入されますが、年金額の計算には反映されません。


通勤災害制度の対象を拡大

 厚生労働省が労働政策審議会に諮問していた労働安全衛生法等の改正案について、おおむね妥当とする答申がなされました。厚生労働省では、この答申に沿って改正法案を今国会に提出し、早ければ平成18年4月1日より施行されることになります。

◆現行の通勤災害の保護範囲
 通勤災害の保護制度は、労働者が通勤途中に負傷した場合に、業務上災害に準じた措置を労災保険から行うことを目的としています。
 通勤の定義として「労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路および方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」と定められ、具体的には、自宅などの「住居」から会社、工場などの「就業の場所」へ向かう行為、または就業の場所から住居へ帰る行為であること等が要件となります。

◆複数就業者の事業場間の移動
 始業前や終業後に、別の会社でアルバイトなどをしている社員(いわゆる複数就業者)が、アルバイト先から会社へ直接向かう途中、あるいは終業後にアルバイト先に直接向かう途中の災害は、現行の制度では「住居と終業の場所との間」にはならないため、通勤災害の保護の対象外とされています。
 しかし、ワークシェアリングの推進や社員の副業を解禁する企業が増えてきていること等に伴い、複数の企業で就業する者が増加しつつあるという現状があり、複数就業者の事業場間移動についても、通勤災害の保護の対象とすることが適当であるという提言がなされました。
 最初の会社から次の会社への移動は、次の会社への出勤行為にあたるため、この途中で生じた災害については、次の会社の労災保険を適用するという処理になりそうです。なお、会社が兼業を禁止しているか否かについては関係なく、通勤災害として保護されることになると考えられます。

◆単身赴任者の赴任先と帰省先の移動
 単身赴任者が週末などに家族の住んでいる自宅に戻る間に災害が生じた場合、行政解釈としては、会社から直接、家族の住む自宅へ帰る場合や、その自宅から直接会社に出勤する場合については、原則として通勤災害として認められています。
 しかし、単身赴任先のアパート等から家族の住む自宅に帰る「住居間移動」については、通勤の定義にある「住居」と「就業の場所」との往復行為とは認められていません。実態として、単身赴任者が家族の住む自宅に帰省する場合、帰省の準備のために一度、単身赴任先のアパート等に戻ってから自宅に戻ることが多いという現状があり、単身赴任先の住居を「就業の場所」とみなして通勤災害として保護すべきという提案もあわせてなされています。

 
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残業代未払い問題

 “人材派遣会社S社が2年間の未払い残業代など計約2億8,000万円を支払った”、“家電量販店大手のB社が社員を管理職扱いし、残業代1億2,700万円の不払いで社長ら書類送検”など、最近の新聞等でも多くの残業代未払い問題が取り上げられています。

◆労働基準監督署の調査
 労働基準法や労働安全衛生法などの法令違反の発見と、その違反事項の是正を目的に、労働基準監督署の労働基準監督官が事業場へ立ち入り調査を行っています。
 この調査で特にチェックされる項目として、時間外・休日労働協定の提出、割増賃金の適正な支払い、就業規則の作成・届出、労働条件の書面による明示、定期健康診断の実施、18歳未満労働者の年齢証明の備えつけ等があります。
 労働基準監督官には、事業場への立ち入り権限や帳簿書類の提出を求める権限、使用者および労働者に対して尋問を行う権限があります。
 労働基準法等については、法令違反をしたからといってすぐに罰則を科されるということはほとんどありません。法令違反が、深刻で重大な問題を引き起
こさないうちに、労働基準監督署が監督を行い、調査、是正を求めるという監督制度となっています。


適正な残業代の支払い

 労働基準監督署の調査で残業代の未払い等が発覚すると、過去2年間さかのぼって支払うことはもちろん、予想外の出費で会社の経営にも悪影響を及ぼしかねません。また、会社が大きくなればなるほど、新聞等に取り上げられ、会社の社会的信用が失墜し、その回復には多大な労力が必要となってしまいます。
 出勤簿やタイムカードが実態どおりに記録されているか、割増賃金の計算であれば、時間外労働が1.25倍、休日労働が1.35倍、深夜労働が0.25倍の法定以上で計算され、給与締めごとに適正に支払われているか、36協定(時間外・休日労働に関する協定書)は毎年提出されているか等を再度確認し、いつ調査が入っても証明できるよう、日頃から整備しておくことが重要です。
  労働基準監督署の調査は、無作為・定期的に対象になる場合もありますが、社員からの「情報提供・申告」による場合も多くあります。労働の対価としての給与は、社員から見ても、わかりやすい給与体系にしておくことが大切なポイントです。

今月のことば
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 悪魔とも手を結ぶチャーチルは国民の高貴な心を引き出しそれを政治と戦いの基盤にした。一方、ヒトラーは、国民の邪悪な心を引き出しそれを政治と戦いの基盤にした。チャーチルは人間の義務と責任の心に立脚したのであり、ヒトラーは、人間の利己心、被害者意識、憎悪に足場を置いたのである。イギリス人もドイツ人も本質に差があるわけではない。どんな人間にも潜むさまざまな要素、それを時代環境や指導者が選び分けて引き出すのである。

                   田中秀征  『新しい出発』より

〜当事務所より一言〜

 春というよりは初夏を思わせるような陽気の今日このごろ。新年度を迎えられ大きな希望に満ちた日々をお過ごしのことと思います。又年度の初めということで仕事、プライベート共に環境が変わり多忙な日常を送られている方も多いことでしょう。1日中忙しく駆け抜けるより、1日の内に何度か小休止を入れることがかえって次の仕事の能率を高めるのに効果的なことのようです。ほんの1分間、遠くの木々の緑を眺めることは、目の疲れを取るとともに頭を休ませ整理するのにとても効果的なようです。とは言え、本当に忙しい中1分間外を眺める勇気、私にはありません。
 さて今月は前々からお知らせしておりました雇用保険料率変更の月です。
今まで料率表を見て雇用保険料を引いていた事業所も、今月からは賃金総額×率で計算してください。詳しくは同封の案内を参考にしてください。
 また労働保険の年度更新の時期でもあります。保険年度の初めに新年度の概算保険料及び前年度の保険料を確定するための申告・納付を行う、年に一度の大切な手続きですので、ご協力をお願いします。
 ますます忙しくなるような事をお願いしてしまいましたが、ご不明な点は小休止の代わりほどのお気持ちで、お気軽に当所までお問い合わせください。
                               (池亀)
 
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