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平成17年6月号  



市場事務所便り

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社会保険労務士 市場 敬將
 
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中小企業退職金共済制度への移行
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 平成14年4月からの確定給付企業年金法の施行に伴って、平成24年3月末をもって、適格年金が廃止されることとなり、その資産が他の企業年金制度へ移換できるものとされました。
 制度の移行先の1つとして、中小企業退職金共済制度(中退共)があります。
これまでは、中退共への新規加入を条件に、120月(10年)分を上限として資産を移換し、掛金納付月数に通算できるものとされていました。

◆適格年金と中退共の性質
  適格年金は法人税法上に措置された企業の行う退職金制度
 (年金・一時金)の外部積立の仕組みであり、「退職金」とし
 ての性質をもつ企業年金です。
  しかし、適格年金の移行先として用意された新たな企業年金は、
 その支給事由を原則的に“老齢”としています。特に日本版401k
 と呼ばれる確定拠出年金については、60歳以上にならない限り原
 則的に引き出すことができないので、「退職」とは関係しません。
  これに対し、中退共はまさに「退職金」としての性質を持つも
 のであるため、中小企業が対象だという基本的な位置づけはあり
 ますが、適格年金とは最も適合度が高い仕組みだといえます。

◆中退共とは
  中小企業退職金共済法に基づく制度で、中小企業が加入する
 ことのできる社外積立型の退職金制度です。事業主が中退共本
 部と退職金共済契約を結び、毎月の掛け金(全額事業主負担)を
 金融機関に納付します。社員が退職したときは、その社員に中
 退共本部から退職金が直接支払われるようになっています
 (掛金納付月数が11カ月以下は不支給)。
 また、中退共の掛け金は全額損金として算入できるなどの
 メリットもあります。

◆平成17年4月からの改正点
  適格年金から中退共制度へ移行する際の問題点として、上述
 したように新規加入が条件であることと、資産の移換は上限が
 120月(10年)分とされているため、移換できない資産について
 は本人に返還しなければならないことの2点が大きくありました。
  しかし今回の改正により、新規加入という要件は残るものの、
 適格年金における資産が全額移換(ただし従業員本人負担分は
 除く)できることとなったため、適格年金からの移行を保留にし
 ていた企業が、中退共の活用に大きく動き始めるものと思われ
 ます。
  適格年金から移行する制度としては、他に確定拠出年金(日本
 版 401k)、確定給付企業年金、厚生年金基金がありますが、そ
 れぞれにメリットとデメリットがありますので、移行にあたっ
 ては十分に検討することが必要です。

悪貨は良貨を駆逐する
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 負け犬、結婚難民、パラサイトシングルなど、結婚しない・結婚できない若者が増加しており、若者の4人に1人は孤独な老後を迎えるといわれています。出産をしない・出産を先延ばしする女性も増えています。
 売り手と買い手がともに多数存在し、参入と退出が自由にでき、すべての情報を瞬時に手に入れることができるという市場を、経済学では「完全競争市場」といいます。恋愛や結婚も完全競争市場であれば、各々の価値に見合った異性と恋愛し結婚できることになります。
 しかし現実はそうではありません。多くの男女が出会いの少なさを嘆き、碌な異性がいないと愚痴っています。このように、売り手と買い手の情報が偏っていることを情報の「非対称性」といい、価格に対する価値の低い商品が市場に出回ることを「逆選択」といいます。女性の扱いに慣れた一部の男性が女性を手玉にし、仕事熱心で遊び慣れない男性は退屈だと女性から敬遠され婚期を逃すのも、情報の非対称性と逆選択といえるかもしれません。
 また、先進国では高度に社会システムが発達しており、子どもが一人前になるまでにかなりの時間と費用がかかります。国が豊かになり社会システムが複雑になるほど、人々は子どもをつくることに消極的になります。情報を得れば得るほど、子どもつくるということは親にそれだけの負担と覚悟を強いるからです。子育てに自覚のある両親の子どもは少なくなり、情報が少ない・自覚のない両親の子どもが増えるというわけです。
 遊び慣れた男性だけが結婚でき、子育てに自覚のない両親だけが子どもをつくるというのは、グレシャムが発見した「悪貨は良貨を駆逐する」という法則そのものです。
 ケインズ学派のハロッド=ドーマー・モデルにしても、新古典派の経済成長論であるソロー=スワン・モデルにしても、経済を成長させる要因として、
(1)資本ストック、(2)労働投入量、(3)技術進歩を挙げています。
 少子高齢化により資本を食い潰し、労働力人口が減少し、ゆとり教育により学力が低下しつつあるこれからの日本は、ゆっくりと衰退していくしかないのでしょうか。

未払い残業代問題の抜本的解決策
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 厚生労働省は、ホワイトカラー社員の一部にも時間外労働などの割増賃金の支払いの除外対象を拡大する方針を固めました。週40時間制や法定休日制などの労働時間規制に関する労働基準法の見直しを進め、2007年の国会に改正案を提出する意向です。
 労働基準監督署が2003年に行った未払い残業代の是正指導は約1万8,500件で、過去30年間で最悪でした。景気後退局面での過重労働も否めませんが、時間重視の規制と職場の実態のずれも是正指導急増の原因でしょう。
 工場のライン生産などが主流だった頃の労働時間規制が、サービス業中心の多様な働き方が定着した現代に適合しなくなってきており、労働生産性を高め企業の国際競争力を維持するためにも、労働時間規制の抜本的な改正が必要です。
 現行の労働時間規制が適用されないのは、工場長や部長など部下の労働条件を決める管理職だけです。また、実労働時間と関係なく一定時間働いたとみなす裁量労働制は、手続きが煩雑なため導入が進んでいません。ホワイトカラーに対する年俸制も、割増賃金に対する規制が残るため、真の年俸制にはなり得ません。
 時間で成果を測りやすい工場勤務のブルーカラー職種には規制を残し、本人の裁量が大きいホワイトカラー職種では規制を緩和するという方針転換は、過重労働を警戒する労働組合からの反発も予想され、規制除外対象をどう定義付けるかという今後の課題も残しています。
 この法改正が実現すれば、ホワイトカラー社員の未払い残業代問題の解決に繋がること、も考えられます。日本の労働時間を最重視した労働政策は、今大きく転換されようとします。


民間型ADR
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 昨年度の総合労働相談件数は、60万件を大きく上回りました。職場における労働トラブル解決の手段として、ADR(訴訟手続によらず民事上の紛争を解決しようとする紛争の当事者のため、公正な第三者が関与して、その解決を図る手続)はすでに定着しています。
 行政型ADRについて定める個別労働関係紛争解決促進法に加え、司法型ADRである労働審判手続について定める労働審判法が平成18年4月に施行されます。さらに、民間型ADRについて定める裁判外紛争解決促進法が昨年12月1日に公布され、平成19年6月1日までに施行の予定となりました。
 訴訟は厳格な手続きによって行われます。ADRは、紛争分野における専門家が、紛争の実情に即して迅速に柔軟に解決を図るとされています。このADRが普及すれば、様々な紛争解決のために、よりふさわしい解決手段を選択することができるようになるでしょう。
 平成13年12月1日に内閣に設置された司法制度改革推進本部が、昨年11月6日に「今後の司法制度改革の推進について」をまとめました。
 裁判外紛争解決手続の利用を促進するために、ADRにおける当事者の代理人として、司法書士・弁理士・社会保険労務士および土地家屋調査士を活用すること、また社会保険労務士に対しては、信頼性の高い能力担保措置を講じた上で、次に掲げる事務を業務に加えることとなり、これに併せて、開業社会保険労務士が労働争議に介入することを原則として禁止する社会保険労務士法の規定を見直します。

(1)都道府県知事の委任を受けて地方労働委員会が行う個別労働
   関係紛争のあっせんおよび雇用の分野における男女の均等な
   機会および待遇の確保等に関する法律に基づき都道府県労働
   局(紛争調整委員会)が行う調停の手続について代理すること。
(2)個別労働関係紛争(紛争の目的となる価額が60万円を超える
   場合には、弁護士が同一の依頼者から裁判外紛争解決手続の
   代理を受任しているものに限る)の裁判外紛争解決手続(厚生
   労働大臣が指定する団体が行うものに限る)について代理する
   こと。


今月のことば
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 独裁者をゆるさないというのが、どうやら日本的権力の原理のようなのです。
 そしてつねに二重構造であることです。ひろくみれば鎌倉体制は守護・地頭などを全国に置くことによって全国支配を確率したようにもみえますが、半面、京都の律令的権力をのこし、たがいに批判勢力として一つ地面の上に噛みあいつつ、二重装置の上で日本的安定を見出しています。
 後年、後醍醐天皇という人が出現し、中国の皇帝のような専制権を確立しようとして謀叛(当時のことば)をくわだて、ついに鎌倉の北条武家政権をたおしましたが、後醍醐体制というこの専制体制はまったく人気がなく、足利尊氏によってたおされ、ふたたび日本は二重装置にもどっています。足利権力は与党、京都の公家勢力は体制内の野党として温存されました。足利権力は、いっそ京都の公家勢力を一掃してしまえばよさそうなものですが、それをしようとしなかったのは、権力が一枚っきりになるのを本能的におそれたのです。日本人の独裁ぎらいということは、こういうあたりの機微をみても察知することができるでしょう。

                   司馬遼太郎『余話として』より抜粋

〜当事務所よりひとこと〜

 黄梅の候、今年も梅の実の膨らみが楽しみな季節となりました。子供の小学校入学記念樹としていただいた我が家の梅の木も7年目になりますが、小さいながら実をつけはじめました。今年はいくつの実が採れるか楽しみにしています。

 さて、皆様のご協力を頂いた労働保険の年度更新処理も終了致しました。ありがとうございました。
 引き続き、社会保険料の見直しをする算定届け提出の時期となります。4・5・6月に支払われた給与額をもとに保険料額が決まります。書類のご用意をお願いすることとなりますので、お忙しいところお手数をおかけ致しますが、ご協力をお願い致します。
                  (市場敏江)

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