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平成18年9月号  



市場事務所便り

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社会保険労務士 市場 敬將
 
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晩婚・晩産化で女性の労働力が上昇
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◆女性の労働力率の上昇の要因は
近年、25〜29歳の女性の労働力率(有業者と失業者の合計が人口に占める割合)が上昇していますが、その原因は、女性の晩婚化や非婚化、出産時期が遅くなる晩産化が主なものだと内閣府はみているようです。
出産・育児を機に仕事を辞める女性が増える「M字カーブ」が改善したのは見かけだけで、女性の仕事と子育ての両立が進んだというわけではないということです。

◆「M字カーブ」とは
M字カーブは、出産・育児期の女性の労働力率が他の年齢層より落ち込む減少を指します。出産・育児を機に退職せざるを得ない女性が多いためです。
2002年のM字カーブを見てみると、25〜29歳と30〜34歳の労働力率が上昇し、カーブの「くぼみ」が浅くなっています。20代後半の労働力率は、1987年から2002年にかけての15年間で15.4%上昇しています。

◆「M字カーブ」の中身を見ると
上記データを一見すると、M字カーブは解消に向かっているようにみえます。しかし、内閣府は、それは見かけ上の改善であり、女性が仕事を続けながら出産・育児をしやすくなったからではないと分析しています。
1つ目の理由は、「晩婚化」・「非婚化」です。20代後半の女性の構成割合をみると、1987年から2002年にかけての15年間で独身者の割合が4割弱から6割弱に上昇しましたが、その反面、末子が3歳未満の既婚者の割合は3割強から約2割に低下しました。独身者の割合が高まれば、同年代の女性全体の労働力率も上がります。こうした構成変化だけで15年間の労働力率上昇の65%を説明できるとのことです。
2つ目の理由は、「晩産化」です。20代後半の女性のうち、15年間で最も労働力率が上昇したのは、子のいない既婚者です。2002年時点では、約75%が仕事をしているか、仕事を探していました。結婚しても仕事を理由に早期の出産に慎重な女性が増えたり、当面は子をつくらずに夫婦共働きの生活を楽しむ女性が増えたりしたためのようです。

◆少子化との関連は?
晩婚化や晩産化を主因に20代前半の女性の労働力率が上昇したことは、少子化対策にも影響します。子育てに伴う経済的負担の重さや仕事の両立の難しさが女性に出産をためらわせている面が大きいとはいえ、個人の価値観に左右されやすい晩婚化や晩産化を食い止める具体的有効策がなかなか見当たらないからです。仕事と育児を両立できる女性を増やしつつ、いかに晩婚化や晩産化に歯止めをかけて、出生率を回復できるかが、今後の課題となります。


成果主義賃金訴訟で社員逆転敗訴の判決
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◆「成果主義賃金訴訟」の概要
年功序列賃金から成果主義賃金への変更は無効だとして、変更により減少した賃金の支払いなどを求めて社員3人が会社を訴えていた訴訟で、東京高裁は、賃金制度の変更は高度の必要性に基づく合理的なものであると認めてその効力を肯定し、制度の変更を無効と認定して約300万円の支払いを命じた第1審の判決を取り消しました。

◆不利益変更となる制度の変更
社員3人は、制度変更に伴って基本給が7万5,000円〜3万8,000円減少し、役職も降格されました。会社は、年齢給と職能給とで構成する基本給のうち、年功序列で運用していた職能給を廃止し、業績目標の達成度などにより格付けする、職務等級に基づく職務給を支給する制度に変更するとともに、評価次第で昇格も降格もあり得る制度に変更しました。
年齢給も30歳以降は定年まで同額とし、ある等級以上の者には支給しないとする変更を行いました。また、制度変更に伴い、2年間に限り従前賃金との差額を支給する経過措置を講じていました。

◆「高度の必要性に基づく」合理的な内容
判決では、制度の変更は賃金減少の可能性がある点で不利益変更に当たるとした上で、経過措置が2年間に限り賃金減額分の一部を補てんするにとどまるものであって、いささか性急で柔軟性に欠ける嫌いがないとは言えない点を考慮しても、なお、上記の不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると言わざるを得ないと述べ、制度変更は経営上の必要性に見合うとして相当であると認めました。

◆制度変更が合理的であると認めた判断理由
今回の判決の判断理由として、以下のことが挙げられています。
@ 主力商品の競争が激化する中で労働生産性を高め、競争力を強化する必要性があった
A 賃金原資総額を減少させるものではなく、賃金原資の配分の仕方をより合理的なものに改めようとするものである
B どの社員にも自己研鑽による職務遂行能力等の向上により昇格・昇給することができる平等な機会を保障している
C 人事評価制度も最低限度必要とされる程度の合理性を肯定しうるものである
D あらかじめ社員に変更内容の概要を通知し周知に努め、労働組合との団体交渉を通じて労使間の合意により円滑に賃金制度の変更を行おうと努めた
E それなりの緩和措置としての意義を有する経過措置が採られた
なお、社員側は上告する方針だそうです。




雇用保険 65歳以上でも新規加入が可能に
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◆雇用保険制度の見直し
厚生労働省は、現在は認めていない65歳以上の人の雇用保険への新規加入について、これを認めるよう制度の見直しに着手するようです。少子化の影響による若年層の労働力人口の減少が懸念される中、65歳以上の就業者の増加につなげるのが狙いです。

◆現在の雇用保険の仕組みでは
雇用保険とは、会社に勤める労働者が給与の一定額を保険料として納めておくと、失業した際に就労時の給与の一定割合をいわゆる「失業手当」として一定期間受け取ることができる制度で、現在の雇用保険制度は、65歳になる前から雇用保険に加入している人に限り、65歳を超えた場合に継続加入を認めており、保険料も免除しています。65歳以上の人の新規加入については、現制度では認められていないのです。
65歳になる前から雇用保険に加入していて継続加入が可能な人と、65歳以上で新規加入できない人とでは待遇の差が大きいため、保険に加入できない65歳以上の高齢者の再就労意欲をそいでいるとの批判が出ていました。
今回の見直しで65歳以上の人も新規加入が認められると、失業時に失業手当が受け取れるようになるほか、雇用保険制度の職業訓練などを利用できるようになります。

◆今後の議論の焦点
新規加入の条件は今後詰められていくようですが、週20時間以上働くなど、今の雇用保険の加入条件を満たす65歳以上の人に門戸を開くのが基本方針のようです。
約500万人いる65歳以上の就業者のうち、200万人程度が新規加入の要件を満たすとみられています。また、65歳以上の新規加入者から保険料を徴収するかどうかも、議論の焦点となりそうです。
現在、保険料を免除されている65歳以前からの加入者と同様に65歳以上の新規加入者にも保険料免除を認めれば、雇用保険財政を圧迫することにつながります。しかし、新規加入者と65歳になる前からの加入者との間で待遇に大きな差が生じることは、不公平との批判がでるおそれもあり、慎重な議論が必要といえるでしょう。
少子高齢化で全体の就業者数が減少する中、65歳以上の就業者は今後も増加すると思われます。しかし、現在65歳以上の就業者のうち雇用保険に加入している人は全体のうちわずかとみられ、この制度の見直しをきっかけに、高齢の就業者がより安心して働けるようになれば、全体の労働力の増加にもつながるのではないかと期待されます。



今月のことば
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 つまり憲法を改正するというのなら、憲法の意味を考えなくちゃならない。ただ権力行使する上からだけの憲法改正であってはならない。権力行使を受ける側の国民の立場に立って、権力行使を認めんよ、といことがなければおかしい。
 いまの議論だと、権利ばっかり書いて義務がないから、国を守る義務だとか、何か知らんけれども、いっぱい義務を書けと、こう言うんですね。それは大体話が逆だ。近代憲法というものの性格すら、いまの若い政治家はわかってないのかということです。
 衆参両院の(憲法調査会の)報告と、自民党の意見を読んでみて、「これはいかんな」というのが私の率直な感想だ。危ないと思う。
 どうも人間というのは、危機のようなものをつくりたがるんですね。それによって緊張感を煽る。そして、その危機が過ぎたら、また新しい危機をつくるんです。危機を煽ることによって、実際の危機になってしまうということも考えなければならん。過去の歴史から、今の日本の指導者は本当に学んで反省し、考えているのだろうかと、疑問に思う。
 それは、たとえばソ連がなくなった。そうすると、今度は北朝鮮が危機だと言う。次は中国の軍事力強化が危機だと言う。国民の危機感をなんで煽るんだ。本当の危機なら黙って考えたらいいんです。それの先頭に立つのが、マスコミなんだよ。なんであんなこと書くかなと思う。

『世界』 二〇〇五年八月号より 対談:後藤田正晴・加藤周一

 

 

〜当事務所より一言〜
 
読書の秋ということで1冊の本を読んでみました。
『鏡の法則』というタイトルのこの本は、「大切な息子が友達から責められている」という相談を受け、心理学に詳しい知人が「母親が心の中で父、夫を責めている」ということに気づき、母親に二人と和解し、感謝をするようにアドバイスすることで悩みを解決するという内容です。
その本の一節に『人生で起こるどんな問題も、何か大切なことを気づかせてくれるために起こります。そして、あなたに解決できない問題は決しておきません。あなたに起きている問題は、あなたに解決する力があり、そして、その解決を通じて大切なことを学べるから起こるのです。』 
悩んだとき、問題にぶつかったときは、以上の一節を思い浮かべるようにしています。

(関塚)

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