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平成18年12月号  



市場事務所便り

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社会保険労務士 市場 敬將
 
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話題の「ホワイトカラー・イグゼンプション」とは

◆アメリカの「ホワイトカラー・イグゼンプション」
 「ホワイトカラー・イグゼンプション」は、一定の要件に該当する労働者については、何時間働かせても、使用者は割増賃金を支払う必要がないという制度であり、アメリカでは労働者の2割以上が当てはまるとされています。
 アメリカの公正労働基準法(FLSA)と労働長官の規則によると、例えば、部下を2人以上管理している労働者で、年収が280万円程度以上あれば、概ね管理職とされています。アルバイトを含め2人以上を管理監督していれば、管理職として時間管理をされず、割増賃金も支払われないのです。また、主要プロジェクトのチームリーダーや保険会社のアジャスターのような人も広く含まれます。
 しかし、アメリカでは、使用者が違法に残業代を払わないで裁判になるケースも続出しています。あるレンタカーチェーンでは、3人のショップの従業員にそれぞれ、「マネージャー」、「アシスタントマネージャー」、「マネージャー見習い」という肩書きをつけて、「全員マネージャーだから、管理職だ」として、一切割増賃金を支払っていなかったため、従業員から集団訴訟を起こされ、巨額の賠償金を支払わされました。

◆日本版「ホワイトカラー・イグゼンプション」
 現在、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会において、アメリカと同様の「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入について議論が行われており、厚生労働省は来年の通常国会に労働基準法の改正案として提出する方針です。
管理職一歩手前の労働者を対象に、一定の年収や休日確保などを条件に労働基準法の週40時間の労働時間規制を除外するもので、時間外労働については残業代が支払われないというものです。

◆過労死した労働者の遺族の反応
この制度の導入については反対の意見も多く、過労死で亡くなった労働者の家族やうつ病などで健康を害した労働者らが、先日、厚生労働省などに対して反対の申入れを行い、「制度は長時間労働を助長する。私たちの悲しみ苦しみを二度と繰り返してほしくない」と訴えました。
申入書では、長時間労働の実態や危険性を訴え、制度の導入で違法な労働状態が合法化される危険性を指摘し、過労死やストレスにおびえることなく、安心して働けるルールの確立を求めています。



給与は全額差し押さえられる?

◆差し押さえ命令の出た社員への支払いは?
 会社員の借金返済が滞り、裁判所から給与の差し押さえ命令が出てしまいました。しかし、給与は雇用主が本人に直接支払うべきものだと法律で定められています。
 命令の法的意味は重そうですが、全額を押さえられたりするケースはあるのでしょうか。

◆賃金支払いの5原則
 労働基準法では、使用者に対して立場が弱くなりかねない労働者の生活を守るため、「賃金支払いの5原則」(直接払い・通貨払い・全額払い・毎月払い・一定期日払い)が定められています。

◆裁判所の差し押さえ命令には従うべき?
裁判所が差し押さえを命じたということは、法的に貸主の主張が通ったということです。この場合、その会社員は差し押さえ命令に応じなければなりません。
 直接払いの原則に反するようにも見えますが、問題はありません。このようなケースは借金返済が滞った場合だけでなく、国や地方への税金の滞納なども同様の扱いとなります。

◆4分の3は原則本人に
 給与を全額差し押さえられれば、その会社員は生活ができません。このため、差し押さえ金額は原則として賃金の4分の1となっています。雇用主は4分の3を本人に、4分の1を貸主や国・地方に支払うこととなります。この場合、債務者保護の観点から、賃金から所得税、地方税、社会保険料などを控除した手取り賃金をベースに考えられます。
 全額差し押さえを禁じているのが生活保護の観点であるため、標準的な世帯所得を超える高い給料をもらう人からは、政令で定める額を超える部分の全額を差し押さえに回せることとなります。

◆「直接払いの原則」の効力
 「直接払いの原則」は、この差し押さえ命令以外ではかなり強い効力を持ちます。例えば複数の社員から委任を受けた者にまとめて支払い、後に分配してもらうことは許されませんし、代理人などへの賃金支払いも「直接」の原則から反するとされています。
 もし、社員が賃金を第三者に譲渡することを当事者間で合意していても、雇用主はとりあえず本人に支給するべきです。



「年収130万円」の壁、働き方で変化?
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◆「年収130万円」未満の意味 
働く時間と日数が正社員のおおむね4分の3未満で、年収が130万円未満である場合、配偶者が加入する厚生年金保険や健康保険の被扶養者となり、健康保険や年金の保険料を負担しなくても給付が受けられるようになります。
 しかし、この「年収130万円」の内容が職業などにより異なることは意外と知られていないのではないでしょうか?

◆額面通りでない職業も
 サラリーマンの夫を持つ妻の場合、妻がパートで働いているときは、給与、公的年金などすべてが収入となりますので、これらを足し合わせて130万円未満かどうかが問題となります。
 一方、妻が自営業者だと、売上からその売上を得るための必要経費を控除した金額を年収として扱います。この経費には、消耗品や研修費など実際に使用した金額以外に、パソコンや車を購入した場合の減価償却費も含みます。したがって、妻が自営業者なら売上130万円以上であっても夫の扶養になれることがあります。
 また、妻の働き方だけでなく、夫の会社の健康保険組合の規約によっても被扶養者になれるかどうかが異なります。健康保険組合の中には、規約で年収130万円未満でも、103万円を超えていると被扶養者にはならないと決めている組合もあるからです。

◆現実はどうか?
 本来、年収103万円以下は税法上の扶養親族、130万円未満は社会保険の被扶養者の認定基準ですが、混在しているのが現状です。いずれにしても、国民年金に加入している夫を持つ妻は、働き方や収入にかかわらず、医療も年金も自身で保険料を支払います。パートに出て厚生年金に加入したほうが社会保険料も安く年金額も増えることがあるのが現実のようです。
 一般的に、サラリーマンに扶養される第3号被保険者は有利だと言われていますが、政府はパートを厚生年金に加入させることを検討中です。今までのように制度に合わせて働き方を選ぶ時代が終わりつつあるのではないでしょうか。



企業による飲酒運転対策への取り組み

◆飲酒運転への関心の高まり
 ここ最近、飲酒運転への関心が高まり、企業の間でも飲酒運転をした社員に対し厳罰を下せるような体制を整備する動きが出始めているようです。改めてコンプライアンス(法令順守)経営の見直しに躍起になっている企業も多いのでしょうか。
 酒類を扱う飲食業界や自動車に関連する運送会社、自動車メーカーなどでは以前から厳しい内規を設けて社員に飲酒運転の禁止を徹底させている例が多かったようですが、最近の危機感の高まりは、こうした業界だけにとどまらないようです。
 社会保険労務士事務所や法律事務所には、「飲酒運転に対する社内処分を厳しくするためにはどうすればいいか」との相談が増えているといいます。

◆就業規則による明文化
 社員が就業時間中に業務に絡み飲酒運転事故を起こせば、企業が雇い主として責任を問われ、損害を賠償する必要も生じます。多くの企業では、就業規則に「故意または重大な過失により会社に重大な損害を与えた場合」を懲戒解雇事由の1つに定めているため、処分が可能になります。

◆休日の飲酒運転でも懲戒処分は可能?
 対応が難しいのは、休日の飲酒運転など、業務とはまったく関係のないケースです。
就業規則では、通常、無断欠勤や会社の秩序を乱した場合など、どんな事例が懲戒処分に相当するかを規定しているので、その規定に「飲酒運転をした場合」という項目を加えることがこの場合の対処法の1つといえます。
 しかし、労働基準法では客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇を無効とすると定められています。過去には、休日に飲酒事故を起こした社員の懲戒解雇について、事件が報道されず会社の社会的評価は棄損されていないことや、他の社員からも処分が重いとの意見もあるなどとして懲戒解雇を無効とした裁判例があります。飲酒運転に対する社会の意識変化や、社内の他の処分例とのバランスを考慮すべきだといえます。

◆飲酒運転を許さない姿勢こそが重要
 飲酒運転は決して許されるものではありません。法令順守の観点から、企業が就業規則などを通じて飲酒運転を許さない姿勢を社員に示せば、飲酒運転減少につながる可能性があるといえるでしょう。



今月のことば
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 個人としては疑う力を持っていても、集団の中に入ることによってその力が奪われてしまうことも多い。
 集団心理として典型的だと言われるものの一つにリスキー・シフトがある。一人で判断したことよりも、集団で相談して決めたことのほうが、向こう見ずな結論が出ることが多いというものだ。たとえば、会社内で来期の売り上げ目標数字を決めるとき、個人としては誰もが、前年と同じ数字を維持することすら難しいと思っていても、会議で相談すると、「売上高前年比10%増」などという結論に至りやすい。自分が臆病者と思われたくないという心理が働いたり、大勢の中で気が大きくなったりするためだ。また、自分一人で決めたわけではないので、責任が分散されるという気持ちもあるだろう。こうして「売上高10%増」を前提に、予算や人材配置を組み立ててしまうことによって、結果的にコスト増で前年より利益が大幅に低下するという最悪の結果を招くこともある。一人で決めるよりも、集団で決めたほうが、疑う力が奪われてリスクが大きくなる。ビジネスで会議ばかりしている人は、その点を知っておいたほうがいいだろう。
 集団心理でもう一つ強調されるのは、同調心理だ。有名な実験の一つに、長さが同じ三本の棒を書いておき、それを見せて、どれが長いかを判断してもらうというものがある。そのときに、サクラを三人くらい混ぜておき、その人たちに「一番右の棒が長いと思う」と言わせると、他のみなも「右の棒が長い」と言うようになる。「周囲の言うことが正しそうなので、自分の考えに誤認があるのだろう」とか「みんなが言うことに合わせておかないと自分がおかしいと思われる」というような気持ちが働いて、認知構造が変わってしまうのだ。周りの人の意見によって、疑う力が奪われてしまうのである。
 一般社会においても、声の大きな人の意見に流されるということはよくある。いじめの心理もこれに近い。誰か声の大きな人が「あいつはひどい奴だ」と言い始めると、それに同調してみんなが悪口を言い出す。自分個人としては「かわいそうだ」と思っていても、その集団の中では、「あいつはひどい」と言わざるを得ない雰囲気になってくる。そのうちに、自分自身の考え方も変わってきて、「あいつはひどい奴だ」と本気で思いこんでしまうこともある。
 世論も案外とそれに似たところがある。自分がまだどちらか判断しかねているときに、テレビに出てくるコメンテーターや有名評論家たちが、「これはよくない」と言うと、「そうだ、よくないことだ」という気持ちになってくるのだ。いったん世論が形成されてくると、それに同調する心理が働き、自分も同じような考え方になりやすい。
 もっとも、テレビに出てくるコメンテーターの側も、一般国民の意見に同調して、視聴者受けするような意見を言いがちになるという面もあるが。

和田秀樹 「疑う力」の習慣術
「集団心理」と疑う力

 

 

〜事務所よりひとこと〜
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 いろんな事を覚える時期の我が子ですが、電話を持ち会話をする真似事をします。その会話が私のしゃべり方にそっくりでハッとしてしまいました。いろんな事を覚え吸収する時期の子供にとって、周りの大人が正しい言葉使いや行動をしなければと思ってしまいました。
 さて今年も残すところ1ヶ月を過ぎてしまいました。皆様にとってこの一年どんな一年間でしたでしょうか。何か忘れた事がないか、この一年間を振り返ってみてはいかがでしょうか・・・

(中村)