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平成21年8月号

市場事務所便り
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社会保険労務士 市場 敬將
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公的年金の運用損失が過去最悪に

◆年金積立金の運用主体
 公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2008年度の市場運用利回りがマイナス10.03%だったことがわかりました。
 GPIFは、厚生労働大臣から委託され、国民年金と厚生年金の年金積立金の管理および運用を行っています。積立金は平成12年度までは全額を旧資金運用部に預託することが義務付けられていましたが、平成13年4月に財政投融資制度改革が行われ、厚生労働大臣による自主運用が実施されています。この改革により、積立金は一部を除いて厚生労働大臣からGPIFへ寄託されることとなりました。
 そして、今年3月末の運用資産総額は約117兆円で、このうち市場運用分が約92兆円を占めており、資産構成割合は国内債権が67%、国内株式が12%、外国債券が11%、外国株式が10%となっています。

◆さらなる積立金不足の可能性も
 今回の運用損失は過去最悪の9兆6,670億円で、特に第2および第3四半期の落ち込みが大きく響いています。
 これは、リーマンショック等により拡大した金融危機とその実体経済への波及による急激な景気減速から内外の株式市場が大幅に下落したことに加え、対ユーロを中心に為替市場で急速に円高が進んだことが影響しています。
 中でも、運用分の利回りの成績が最も悪かったのが、外国株式の−42.21%、次いで国内株式の−35.55%です。その結果、平成19年度末に7兆4,180億円あった累積黒字は、平成20年度末に1兆9,908億円の累積損失に転落し、5年ぶりに累損を抱えることになりました。
 日本の場合は、債権での運用が主体なため、海外に比べると今回の金融・経済危機の影響は比較的小さかった面もありますが、運用利回りが好転しないとさらなる積立金不足の問題を引き起こす可能性が潜んでおり、企業・労働者の将来へ様々な影響を与えることにもなります。



派遣労働者の雇用と労災をめぐる問題

◆相次ぐ労働局による是正指導
 ここのところ、派遣労働者の雇用に関して、労働局による是正指導が相次いで行われています。
 東京労働局は、今年5月に日産自動車(東京都)に対し、派遣社員の雇用の安定を図るように是正指導を行いました。これは、同社に勤務している派遣社員2人(いずれも20代女性)が、直接雇用を申し立てていたことを受けたものです。
 また、広島労働局は、マツダ(広島県)に対して是正指導を行っていましたが、同様に、同社の自動車の委託生産を行っている取引先のプレス工業(川崎市)に対しても是正指導を行いました。これは、昨年末に雇止めされた元派遣社員の男性による「同社は派遣社員の短期雇用と再派遣を行っていた」との申告を受けたものです。
 さらに、兵庫労働局は、三菱電機の子会社である三菱電機エンジニアリング姫路事業所(兵庫県)と同県の派遣会社に対し、実態は「派遣」であるにもかかわらず「出向」と装って派遣労働者を働かせていたとして、職業安定法に基づく是正指導を行いました。

◆増加する派遣労働者の労災事故
 厚生労働省の調査によれば、2008年に労災事故で死傷した派遣労働者は5,631人だったそうです。2年連続で5,000人を超え、製造業への派遣が解禁された2004年と比較すると8.4倍になっています。しかも、労災事故を報告しない「労災隠し」が横行しているとの疑いもあり、上記の数は「氷山の一角ではないか」との声もあがっています。
 このような状況を受け、厚生労働省では、派遣先事業場で発生した労災事故について、派遣先への求償権の行使を徹底することを目的として、過失割合の判断基準を作成する方針を明らかにしました。過去の損害賠償請求に関する裁判例などを参考にして、今年の10月頃までにガイドラインをまとめる意向のようです。

◆企業に求められるコンプライアンス
 派遣労働者をめぐっては、偽装請負、偽装派遣、偽装出向などが一時期話題となり、新聞等でも大きく報道され、多くの企業が派遣労働者の雇用改善に取り組みました。
現在は「100年に一度の大不況」と言われる状況で、多くの企業が経営に行き詰まっています。しかし、そのような状況下であっても、「コンプライアンス遵守」の精神を忘れてはいけません。法律に則った派遣労働者の雇用、労災事故への対応等が企業には求められます。



適年廃止まであと数年…各企業の動きは?

◆廃止まで残り約2年8カ月
 ご承知の通り、税制適格年金(適年)は2012年3月末で廃止される(税制上の優遇が受けられなくなる)ことが決まっています。
 先日発表された厚生労働省によるアンケート調査結果によれば、適年を導入している企業のうち、約89%の企業が何かしらの対応を行っているそうですが、約9%の企業は何らの対策も行っていないそうです。また、社団法人信託協会に発表によれば、2009年3月末時点における適年の資産残高は、8兆1,319億円(対前年比30.8%減)となっています。
 適年から他の年金制度への移行作業には1〜2年ほどかかることなどから、厚生労働省では、できるだけ早めに手続きを取るよう求めています。

◆移行先の選択肢
 適年からの移行先の選択肢としては、一般に、中小企業退職金共済(中退共)、特定退職金共済(特退共)、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金、生命保険などが挙げられます。また、適年の廃止を機に、自社における退職金制度を廃止してしまうことも考えられます。
 これらのうち、多くの中小企業が選択しているのが中退共ですが、独立行政法人勤労者退職金共済機構の調べによれば、2008年度における適年から中退共への移行件数は2,437件(前年度比4.5%増)であり、適年解約企業のうち中退共に移行した割合は約33%だったそうです。


◆移行を実施していない企業の考え
 移行を実施していない企業のパターンとしては、主に以下のものが挙げられます。
(1)「まだまだ時間がある」と考えているパターン
(2)「どこに移行してよいかわからない」というパターン
(3)「他社の動向をうかがっている」というパターン
(4)「適年廃止・適年移行に関心がない」というパターン
 いずれにしても、移行を実施していない企業、まだ何も行っていない企業は、早く何かしらの対策をとらなければならない時期に来ています。

 

不景気下における企業の人事面での対応策

◆企業はどんな対策をとっているか
 労働政策研究・研修機構が昨年12月に行ったアンケート調査(全国2,734社が回答)の結果によれば、各企業が行った「経済情勢悪化への人事面の対応」として、以下のものが挙げられています。
(1)残業規制(26.1%)
(2)中途採用の停止・削減(21.5%)
(3)配置転換(14.9%)
(4)賃金制度の見直し(12.7%)
(5)来年度新規採用の中止(12.6%)
(6)派遣社員の契約打切り(10.3%)
(7)期間工などの雇止め(9.8%)
(8)従業員の賃金カット(8.3%)

◆希望退職・退職勧奨・整理解雇
 また、上記で挙げられている以外にも、希望退職制度の実施、退職勧奨の実施、整理解雇の実施などを行わざるを得ない企業も多くなっています。
 一般的には、整理解雇を実施するにあたっては、4つの要素(人員整理の必要性、解雇回避努力義務、人選の合理性、手続きの妥当性)が必要とされています。このうち、「解雇回避努力義務」について考えた場合、希望退職を募集せずに整理解雇を行った場合は「解雇回避努力義務」を十分に果たしたとはいえないと判断するのが一般的な裁判例の考えです。ですので、希望退職を募集した後に解雇整理を行うのが企業にとっての安全策だといえるでしょう。

◆リスク回避を十分に
 希望退職を募集しても、これに労働者が予定人数ほど応募してこないことがあります。この場合、退職の条件を労働者に有利に設定し直し、2次募集・3次募集を行うことも考えられます。また、希望退職募集と平行して、退職勧奨を実施する企業もあります。
 その場合、勧奨が民法上の強迫になることなどのないよう、慎重に手続きを進め、また、法違反と判断されることのないよう、専門家等に相談しながら進めていくのが企業にとってのリスク回避策となります。



〜今月のことば〜

 心底スゴイと思える人に出会い、思わず「この人のようになりたい」と感じる「感染」によって、初めて理屈ではなく気持ちが動くのです。「いじめたらいじめられる」なんていう理屈で説得できると思うのはバカげています。世の中、弱い者いじめだらけだし、それで得をしている大人がたくさんいるのですから。
そうじゃない。「いじめはしちゃいけないに決まってるだろ」と言う人がどれだけ「感染」を引き起こせるかです。スゴイ奴に接触し、「スゴイ奴はいじめなんかしない」と「感染」できるような機会を、どれだけ体験できるか。それだけが本質で、理屈は全て後からついてくるものです。
 想像してほしい。利己的な奴が本当にスゴイ奴だなんてあり得るでしょうか。「感染」を引き起こせるでしょうか。あり得ない。周囲に「感染」を繰り広げる本当にスゴイ奴は、なぜか必ず利他的です。人間は、理由は分からないけれど、そういう人間にしか「感染」を起こさないのです。
 人間は、なぜか、利他的な人間の「本気」に「感染」します。それにつけても、最近の子どもたちは、「本気」で話されたことを「本気」で聞く経験、あるいはそれをベースにして自ら「本気」で話した経験を、どれだけ持っているのでしょうか。それこそが「感染」の土台であるのに。
 「本気」で話されたことを「本気」で聞く経験は、少なくとも一部では確実に減っています。たとえば僕は世田谷区の東部に住んでいますが、周囲には財務省の官舎があったり一流企業の社宅があったりして、両親の学歴がかなり高い地域です。ここで子育てをしていると、いろいろ驚くことがあります。
 最大の驚きが「ダメなものはダメ」がないことです。子どもが弱い者いじめをしていても、親の多くが「頭ごなしはいけません、まず子どもの言い分を聞きましょう」などと言うのです。僕があわてて調べてみると、そのような指南をする子育て雑誌や子育て本が、巷に溢れているではありませんか。
 バカげています。口から先に生まれてきた僕の経験を振り返っても、また、やはり口から先に生まれてきた僕の娘(二歳半)を見てみても、「子どもの言い分を聞きましょう」なんて言ったら、それこそ飛んで火に入る夏の虫。デマカセとまではいかなくても、子どもは何でも言えてしまいます。


宮台真司著
「日本の難点」より抜粋

〜事務所よりひとこと〜

 今年は梅雨が長引き、やっとこの2,3日で夏らしい日差しと暑さになりました。しかしすでに農作物等にはかなりの影響が出ているようです。食品自給率の低すぎる日本にとってはすぐに大打撃になります。我が家の近くには美味しい湧き水があり、水田では美味しいお米ができるようです。そんな話を聞いて休耕田を見ると私も一枚くらい、と思うのですが、新参者が始めるには周囲のしがらみが色々あったり、「スーパーで買った方が楽か。」という自分がいたり、長く続いたものを変えるというのは本当に大変な事です。1ヶ月後に迫っている総選挙、いったい日本がどう変わるのか。楽しみのような、不安なような…

(町田)